衛星搭載地球観測センサに関する動向調査

要旨

(4)光学センサのキーテクノロジの現状と技術開発の展望


DATA 1998.08


 

衛星搭載地球観測センサに関する動向調査

財団法人資源探査用観測システム研究開発機構


 通商産業省では、資源・エネルギーの安定供給確保の観点から、人工衛星を用いた資源探査技術等の開発に取り組んでいます。
 1992年に打ち上げられた地球資源衛星1号(JERS-1)に光学センサ、合成開口レーダを搭載し、現在、資源探査のみならず各種利用分野において多くの情報を提供しております。
 また、1996年に打ち上げられた地球観測プラットフォーム技術衛星(ADEOS)に温室効果気体センサ(IMG)を搭載し、1998年度には、資源探査用将来型センサ(ASTER)を搭載した米国NASAのEOS-AM1が打ち上げられる予定です。
 これらの運用、開発中のセンサ技術を継承し、さらに地球及びその周辺の有益な情報を得るため、資源探査用観測システム研究開発機構(JAROS)では、2000年代の衛星搭載型地球観測センサの動向調査を行っています。


要旨

 衛星搭載型リモートセンシングシステムの検討として,主に画像センサの開発動向に関する以下の調査を実施した。
 衛星搭載型の画像センサを光学センサと合成開口レーダとに分けて,それぞれについて,センサ技術の現状を概観し2005年から2010年をターゲットとした将来動向の展望を行った。
 その結果として,光学センサについては,次の観点から,実現性能を検討した。
(1)既存の観測データの継続性を確保するグローバル観測の性能向上
(2)熱赤外域まで含めた高波長分解能の実現
(3)高地表分解能の実現
 合成開口レーダについては,次の観点から,実現性能を検討した。
(1)多周波数,多偏波等によるマルチパラメータ観測
(2)インタフェロメトリ観測を可能にする衛星システム
(3)高地表分解能の実現
 これらのセンサを実現するために必要となるキーテクノロジと開発課題とを抽出した。
 また,これらのセンサシステムに共通する技術課題として,取得データ量の増大に伴うデータ伝送方式の開発課題を抽出した。
 さらに,ミッション系を中心に,設計,部品・材料,製作,試験,開発管理等の面からのコストダウン方策の予備的検討を行い,センサの開発計画を策定する際の検討に反映させることとした。

 

1.現在のセンサ技術の傾向

 衛星搭載型のリモートセンシングシステムのうち,陸域高分解能ミッションのセンサを中心として,国内外で現在,運用中,開発中または計画中のセンサについて調査を行った。
 最近の陸域高分解能センサの開発の流れを概観すると,各国宇宙開発機関の開発に加え,商用活動によって,センサ技術が格段に進歩している。その特徴は次のとおりである。
高地表分解能化: 3〜0.8m
広い観測幅
高波長分解能化: バンド数にして10以下が,今後は数百に増加
観測頻度の向上: 同一地点を2〜3日ごとに観測。ジンバル,姿勢変更等による斜視観測の利用,大容量記憶装置の利用,数機の衛星群によるシステム構成
衛星の長寿命化: 従来の3年程度が,今後5〜7年に延長
観測データの高容量ダウンリンク:  100Mbps以下から数百Mbps以上に



2.観測システムのコンセプトの現状と展望



2.1 光学センサ



(1)光学センサの現状
 今後の光学センサ及び搭載衛星の技術の発展・推移を,次の4つに大別して検討した。
グローバル観測の確保の観点からの検討: LandsatTM,EOS-AM1 ASTERタイプ
高波長分解能の観点(可視近/短波長赤外域):  Lewis衛星HSIタイプ
高波長分解能の観点(熱赤外域): ジェット推進研究所(JPL)TIMEX
高地表分解能の観点: 米国商用衛星タイプ


(2)光学センサ及び搭載衛星の将来展望
(a)グローバル観測用光学センサ及び搭載衛星の開発動向
 この型の光学センサは可視光〜赤外の比較的広い波長域を,比較的高い地表分解能でかつ広めの観測幅を有していることが特徴である。
 この型のセンサは幅広いユーザからの利用実績も多く,継続的に全地球的な観測を行うことが望まれる。
 ただし、データの継続性は確保しつつ,その時代に合致したセンサ性能の向上は必要である。表1に本タイプの性能諸元例を示す。必要とされる技術的要素として以下の事項が導かれる。
空間分解能向上、広視野: 大口径光学系,広視野光学系,多素子検出器
多バンド化: 大口径光学系,検出器高感度,高S/N化
高データレート: 高性能データ圧縮回路
光学系の高性能大口径化: 小型軽量化及び低コスト短期開発が課題
検出器の多素子化: すでに10,000素子以上の開発が行われており,この発展型で対応可能。
検出器の高感度,高S/N化: 回路系も含め今後の課題であり,最適な方式を選定し開発する必要がある。

表1 グローバルセンサの性能諸元例
項目 性能例
空間分解能 5m〜15m(可視),15m〜60m(赤外)
スペクトル領域 可視〜熱赤外
バンド数 10〜20
観測幅 60〜200km
ラジオメトリック分解能  可視域:≦0.5%
赤外域:≦0.1K
データレート 140Mbps〜3Gbps
その他 ステレオ視バンドを有する。
オンボードデータ圧縮機能を有する。


(b)高波長分解能光学センサ及び搭載衛星の開発動向(可視近/短波長赤外域)

 高波長分解能センサとは,米国JPLの航空機搭載用AVIRIS及び米国NASA Lewis衛星搭載HSI(Hyper Spectral Imager)の例のように,可視〜短波長赤外域を超多バンドに分光して画像を取得するセンサである。
 同一地点の多バンドデータを比較することにより,分光分析が可能となるため,地表の組成(裸地の場合),植生の詳細な分類等が得られる特徴を有する。
 なお、地表分解能については比較的粗く設定されている。
 表2に,本タイプの性能諸元例を示す。本センサは,地上及び航空機用の例はあるが,衛星搭載用としては新しいセンサであり,以下に示す開発が必要であると考えられる。
・広波長域,広視野光学系の開発
・広視野分光器の開発
・多素子,高S/N2次元検出器の開発
表2 高波長分解能センサ性能諸元例
項目 性能例
空間分解能 30〜60m
スペクトル領域   0.40〜2.3μm
バンド幅 5〜10nm
刈幅 50〜70km
撮像周期 30.8ms(一例)
A/Dビット数 10〜12
データレート

61.69Mbps(一例)


 

(c)高波長分解能光学センサ及び搭載衛星の開発動向(熱赤外域)
 EOS-AM1(NASA地球観測衛星)には、熱赤外域に観測バンドを持つASTER/TIR(熱赤外放射計)が搭載される。
 TIRは、90mの高分解能を実現し、物質毎の熱放射特性を利用して鉱物資源の判別や大気、地表面、海面状態の観測を主な目的としている。
 諸外国では、NASAがHCMM(Heat Capacity Mapping Mission)を1978年に打ち上げている。
 HCMMは、地表分解能600mで、異なった時刻に観測された熱赤外データを用いて、外部から加わる温度変化に対する地表物質の温度変化のし難さ,即ち熱慣性を求めることにより岩石の分類,資源探査,土壌の温度サイクル観測等を研究する目的で開発された。
 最新技術を用いてもう一度熱慣性観測を見直すのも有意義と考える。
 今後の熱慣性観測センサは,広い観測幅(30〜170km)と熱赤外域での高い地表分解能(幾何学的瞬時視野30〜10m)が要求される。
 また高い性能のセンサを開発するには,集光光学系,素子数の大きな長尺の熱赤外検出器,ポインティング機構,精密な衛星軌道制御技術等の要素技術開発が必要となろう。

(d)高地表分解能光学センサ及び搭載衛星の開発動向

 高地表分解能センサとは、米国商用衛星等が公称分解能1mと発表しているように,高い空間分解能を特徴とした画像センサである。
 このため,高い地表分解能とS/Nを両立させるため,波長域を広くした単一バンドであるパンクロマチックバンドを採用している。
 この場合,波長情報は,地表分解能を抑えたマルチバンドセンサを併用することにより得る方法が取られている。
 表3に,本タイプの性能諸元例を示す。この例では,分解能1mのパンクロマチックセンサと分解能4mのマルチバンドセンサを組み合せている。
 高分解能のセンサを開発する場合いくつかの要素開発が必要となる。
・高性能大口径光学系の開発
・多素子検出器の開発
・検出器の高感度・高S/N化
表3 高地表分解能センサ諸元例
項目 パンクロマチックセンサ  マルチバンドセンサ
空間分解能 1m〜0.8m 4m〜3m
スペクトル領域  0.5μm〜0.8μm 可視〜近赤外
バンド数 1 3〜4
観測幅 10km(一例) 40km(一例)
データレート 約500Mbps 約500Mbps



(3)光学センサのミッション・データ処理系
 主要開発項目は、データ圧縮技術である。これまでは,観測バンド数が少なく,そのままの画像データを伝送することが可能だった。
 しかし,多バンドあるいは高空間分解能のセンサでは,1Gbps程度の大量の画像データが生成される。
 このため,画像データの圧縮あるいは後述のデータストレージ伸張方式等を行う必要が生じる。


(4)光学センサのキーテクノロジの現状と技術開発の展望
(a)高性能光学系(地表分解能向上のための技術)
 我が国の高性能大型光学系の例としては,宇宙開発事業団が陸域観測技術衛星(ALOS)のパンクロマチック立体視センサ(PRISM)において2.5mの地表分解能で,口径300mmφの大型光学系を開発中である。
 光学地表分解能1mを実現するには,光学系の口径600mmφ〜800mmφ,焦点距離4m〜10mと非常に大型の光学系が必要となる。
 この大きさの光学系は,米国等ではすでに10年以上前に技術開発済みで,商用衛星の高分解能センサ用に技術が開放されている。

(b)高感度,高S/N検出器(地表分解能向上のための技術)
 検出器の高感度,高S/N化は,検出器冷却,トラッキング方式による露光時間増大等数々の方法が試みられている。
 現状で有望な方式としては,同一対象物を複数の検出器で観測し,各々の出力を合成することにより実効的に露光時間を増大させ,高感度,高S/N化を行う方式である。高分解能センサに適用するためには,多素子化及び高速化が必要である。

(c)広視野分光器
高波長分解能センサのキー技術である分光方式としては,いくつか考えられる。
 その中で、回折格子による方式は,波長分解能を容易に高くできる利点を有しているが、分光器内にも光学系が必要であり,高いS/Nを得ようとすると大型化してしまう。
 一方、フィルタ分光方式は,構成が単純なため小型,軽量な構成が得られる。
 波長分解能が低く,小型が望まれる方向ではフィルタ分光が,高波長分解能の用途には回折格子分光が利用されるものと考えられる。



 

2.2 合成開口レーダ(SAR:SyntheticApertureRadar)


(1)SARの現状
 SARは、天候や昼夜に拘わらずデータ取得が可能な電波センサである。
 衛星搭載SARとしては,1978年に打ち上げられたSEASAT SARが最初であり,数ヶ月の短期間運用であったが,世界の関係者の注目を集めた。
 その後,シャトル搭載SARとして,マルチパラメータSARであるSIR-C/Xが開発されてきたが,衛星搭載SARとしてはしばらく途絶えていた。
 衛星搭載SARが本格的に運用されるようになったのは,1991年打ち上げの欧州宇宙機関(ESA)のERS-1(地球資源衛星)SAR,1992年打ち上げの日本JERS-1(地球資源衛星1号)SARからである。  主要な衛星搭載SARを表4に示す。
 
a)運用を終了した又は運用中のSAR

b)今後打ち上げられるSAR


 衛星搭載SARは,1990年代初頭から本格的に動き出し,当初の単一周波数,単一偏波,固定オフナディア角の単機能SARから多偏波化,可変オフナディア化とマルチパラメータ化へと移行しつつある。
 また,1990年代半ばからインタフェロメトリSAR(InSAR)が注目されている。
 さらに,最近はリモートセンシングの商業化の動きとも関連し,高分解能化についての検討が行われている。


(2)SARの将来展望

(a)マルチパラメータSAR

 マルチパラメータSARは、いくつかのパラメータ(周波数、偏波、観測幅等)を組み合わせ、多くの観測モードを有するSARで,ここでは、可変オフナディア角,スキャンSARによる広観測幅モード,多偏波化,多周波化について調査を行った。
表4 主要衛星搭載SAR
衛星 ERS-1/2SAR JERS-1SAR SIR-C/X RADARSAT
周波数 Cバンド Lバンド L,C,Xバンド Cバンド
偏波 VV HH HH,HV,VV,VH HH
分解能 30m 18m 30/175m 25/150m
オフナディア角   23゜ 35゜ 20゜-60゜ 20゜-49゜(入射角)
観測幅 80km 75km 57/225km 100/500km
量子化ビット数  5/6ビット 3ビット 4/8ビット 4ビット
データレート 105Mbps 60Mbps 135Mbps 105Mbps
打上げ 1991年/1996年 1992年 1994年 1995年
備考 ・ウエイブモードあり 
  ・4偏波(L,C),XはVVのみ
・スポットライトモードあり  
・分解能8mの高分解能モードあり


衛星 ENVISAT SAR PALSAR LightSAR
周波数 Cバンド Lバンド Lバンド
偏波 HH,VV HH,HV,VV,VH HH,HV,VV,VH
分解能 30/150m 10/100m 25/100m
オフナディア角 15゜-45゜(入射角) 18゜-48゜ 20゜-52゜(入射角)
観測幅 75/400km 70/350km 50/250km
量子化ビット数 2/3/4ビット 3/5ビット 4ビット
データレート 97Mbps 240Mbps 150Mbps
打上げ 1999年予定 2003年予定 2002年予定
備考 ・2偏波
・ウエイブモードあり
・2偏波
・4偏波も検討中
・4偏波
・スポットライトモード3m
 ストリップマップモード6m
  高分解能モードあり



 基本的に、PALSAR開発及び航空機/地上類似機器の宇宙用化により,マルチパラメータSARは実現可能であるが、データレート,消費電力をいかに抑えられるかが鍵である。
 性能例を表5に示す。
表5 マルチパラメータSARの性能例
周波数 Lバンド Cバンド Xバンド
帯域幅 28MHz程度
偏波 4偏波(HH,HV,VV,VH) HH(またはVV)
オフナディア角 18゜〜48゜程度
観測幅 70km(単一偏波),35km(単一偏波),350km(スキャンSARによる広観測幅モード)程度
分解能 10m(通常観測幅),100m(広観測幅)程度
S/A 20dB程度
量子化ビット数 5ビット
データレート 720Mbps(3周波単一偏波同時観測の場合)

     マルチパラメータSARに関する主要開発要素は以下のとおりである。

・送信電力の高出力化、大電力電源の開発
・アンテナの排熱・熱制御方式の開発
・データレートの低減
・導波管型展開アンテナの開発(Xバンド)

(b)インタフェロメトリSAR(InSAR)
 インタフェロメトリは、離れた2アンテナにより同一地表面を観測し、干渉縞をつくることにより、標高情報を得るもので、地殻変動計測等の利用に向けた研究が近年活発に行われれている。
 実現方式として,以下の各方式について調査を行った。

(1)リピートパスによるInSAR(1衛星の複数観測パス利用)
 本方式は,観測周期が長いことによる相関の低下の問題は本質的にあるが,JERS-1SAR等による多くの実績がある。衛星の軌道制御精度,軌道位置決定精度等の向上は,今後の検討課題であるが、センサとしては,特に大きな課題はない。

(2)衛星タンデム飛行によるInSAR
 (1)の観測周期が長いことによる相関の低下を避けるため,アロングトラック上に配置した2衛星によるInSARであり,ERS-1/ERS-2により試行された。

(3)親子衛星によるInSAR
 衛星2機をクロストラック方向にベースライン長だけ離して配置したInSARである。
 この方式の例としては,テザー型(2衛星をケーブルで接続),衛星を並行して飛行させる等のアイディアがあり,これが実現できれば、広観測幅のインタフェロメトリが容易に可能となるが,並行して飛行させる制御技術等開発課題が大きく,現時点で実現可能といいきれる状況にない。

(4)1衛星2アンテナによるInSAR
 1衛星に2アンテナをベ−スライン長だけ離して搭載したInSARである。
 この方式もスキャンSARによる広観測幅インタフェロメトリを可能とする。
 この方式では,アンテナをどれだけ離して展開できるかが課題である。


(c)高分解能SAR
 最近までの衛星搭載SARの分解能は20m前後のものが殆どであったが,最近になり高分解能SARについての関心が高まっている。
 たとえばLightSAR等では,3mの高分解能モードをもつことを計画している。次期SARとして,Lバンド高分解能SARについて述べる。
 高分解能SARは,データレートの低減が課題であるが,表6の性能の多少の変更を許容すれば実現可能な範囲内にあると考えられる。
表6 高分解能LバンドSARの概略性能例(地表分解能3mの場合)
帯域幅 70MHz程度
偏波 単一偏波
観測幅 30km程度
S/A 20dB程度
量子化ビット数   5ビット
データレート 480Mbps程度
アンテナ寸法 6.5m(Az)×5.5m(El)
送信ピーク電力 2kW程度
衛星高度 500km程度

 

 開発課題は以下のとおりである。
・アンテナ,RF系の広帯域化、デジタル系の高速化
・アンテナの排熱・熱制御方式の開発
・データレートの低減化、小型・軽量化,低消費電力化

(d)PバンドSAR
 Pバンド(450MHz程度)は、Lバンドより周波数が低く、植生等に対する透過性の高いのが特徴である。
 衛星搭載型の実績はなく、いくつかの国で研究中である。
PバンドSARのハードウェアとしての大きな開発要素は,アンテナであり,広帯域アンテナ素子の開発,レンジ方向寸法がLバンドの約3倍となることによる2次元展開アンテナの開発等が必要となる。技術的開発要素は大きいが,分解能等の性能をある程度犠牲にすれば,実現の可能性もあると考える。
 なお,現状では周波数割当てがないこと等の問題もある。


(3)SARのキーテクノロジの現状と将来展望

(a)アンテナ

・軽量化、展開方式、熱制御方式
・高安定アンテナビームの実現

(b)送受信モジュール

 オフナディア角可変,スキャンSARによる広観測幅の実現に必要なアクティブフェーズドアレイのキーコンポーネントである送受信モジュールの開発は,地上用,航空機搭載用として開発されたものを宇宙用化する方向と考えられる。
 主要開発要素は、高出力化、小型軽量化、低消費電力化である。

(c)ディジタルエレクトロニクス

 デジタルチャープ発生回路,A/D変換回路等のマルチパラメータ化,高速化が重要な開発課題となる。
 また,高密度実装,ゲートアレイ化,主要デジタル回路の一体化等により小型軽量化,低消費電力化を図っていく必要がある。

(d)オンボードデータ処理

データレート低減を主目的としたデータ圧縮,オンボード画像処理技術がある。
(1)データ圧縮
 SARローデータの圧縮手法としては,Block Floating Point Quantization(BFPQ)法がSIR-C/X等で広く使用されており,これに代わる有力な圧縮手法は提案されていない。
 BFPQは非可逆であるが位相は保存されるため,インタフェロメトリ処理等の高次処理にも対応可能である。

(2)オンボード画像処理
オンボード画像化により大幅なデータレート低減を実現するためには,画像圧縮処理、装置の小型化,高速化,耐放射線性の検討等種々の開発要素が存在する。



 

2.3 光学センサ及び合成開口レーダ(SAR)のデータ伝送系


 上記の将来動向に沿った光学系,合成開口レーダについて、各センサに共通的に使用可能なものを調査した。


(1)データ記録・再生技術
 JERS-1で初めてミッション記録装置(MDR)が搭載され,地上局のない非可視域の観測に絶大な威力を発揮した。
 しかし,本MDRは,磁気テープ方式であり,テープの磁紛の発生などによって,寿命が短いという欠点があった。
 近年,半導体メモリを用いた記録・再生装置(SSR:Solid State Recorder)の開発が国内外で推進されており,その記録容量もメモリの高密度化に伴って飛躍的に増大しつつある。
 今後はSSRの採用を考えるのが最良である。

(a)記録・再生の性能
 具体例として,下記程度の記録容量を想定している。
バンド数   可視近赤外、短波長赤外 各100バンド
分解能 5〜10nm
量子化 8bit
画素数 2048
データ量 919.2Mbps
記録容量  122.85Gbyte

 



(2)誤り訂正符号化

 センサから出力される高速,大容量のディジタル・データの伝送においては,一般に伝送の過程で,ビット誤りが生じる。実用化されている誤り訂正符号として、ブロック符号では,リードソロモン符号、畳込み符号では,ビタビ復号が良く用いられている。


(3)データ送信技術
  1Gbps程度の大容量の画像データをそのままでは地上局に伝送できないので,120Mbps(直接伝送)程度まで圧縮するか,次に述べるデータストレージ伸張方式を採用するか,あるいは両者を併用する必要がある。
 データストレージ伸張方式は、SSRが同時記録・再生機能及びレート変換機能を有する場合に、高速の元データをSSR再生時に低速で地上局に伝送するもの。

(a)データ中継衛星利用
 中継衛星を使用すれば,2000年代には240Mbps以上の伝送が可能となるが,センサ搭載衛星に衛星間通信機器を搭載する必要があり、かなりの負荷となる。
 したがって、データ中継衛星利用と地上局への直接伝送を併用あるいは適宜選択することを前提に考えている。

(b)変調方式
 デ―タ量が多くなると,少しでも帯域の利用効率を上げることが望ましい。
 JERS-1で採用されたQPSKも候補であるが,QPSKの多相化,あるいは,地上システムで実績のある誤り訂正符号と併用する16QAMなどの変調方式とのトレードオフも重要になる。